2018年2月26日月曜日

ウイルソン アメリカンブレンデッドウイスキー


Wilson American Blended Whiskey,86.8proof
82点

リンゴ酸や蟻酸のような酸味、熟したバナナ、
飲み易く、オールドバーボンらしい甘さ。香りが強く、フィニッシュも長い。


意外と見かけないブレンデッドウイスキーのオールドバーボンです。バーボンといったら語弊がありますかね。アメリカンブレンデッドウイスキー、といった所でしょうか。ブレンデッドウイスキーと言っても、アメリカですから2割以上のストレートウイスキー(バーボン)とスピリッツのブレンドだと思われますが、味の方は侮る事なかれ、今まで飲んできたオールドバーボンに通じるような力強くて甘い香味に思わずニッコリとさせられます。

そんなブレンデッドを販売していたウイルソンはペンシルバニア州にあった閉鎖蒸留所の一つ。キャッチコピーは”That's all”。色々と検索していたら1912年の大統領選挙戦の際にウッドロウ・ウイルソン大統領がキャンペーンソングとして用いた、”Wilson -that's all”が引っかかったので、これからあやかったのかと思っていたのですが、詳しく調べるとこれはどうやら逆のようですね。

1823年にウェールズ人の移民、ロバート・ウイルソンが創業し、後にこれをメリーランド州の貴族であるゴールズボロウ家(Goldsborough)が経営権を買い取ってボトリング工場を作り、大々的に広告を打ち、当時のウイスキーとして不動の名声を築いたといった流れ。蒸留所の名前は"High Spire Distillery"と変えられて、ブランド名としてWilsonの名前が残ります。ちなみにHigh Spire Distilleryはライウイスキーの蒸留所として存在していますが、当時の蒸留所の方は火災で無くなっています。

それにしてもこの”That's all"は何となく古いアメリカっぽいシンプルで分かり易いキャッチーな感じが伝わってきて良い感じですね。


”Federal Law forbids sale or reuse of this bottle”のエンボス入り。
連邦法によりこの瓶の販売もしくは再使用を禁じる、という旨の表記です。
米国でお酒のボトルにこのような表記が義務付けられた法律は1935年に施行されました。禁酒法が廃止された後の不安定な闇市場ビジネスの蔓延に対する規制が必要だった為です。後に1964年12月1日にこの法律が廃止されましたが、それから数年間は市場に出回っていたので、この表記が入っていれば「アメリカで販売されたもので1935年から1970年初めまでに販売されたもの」という情報が確定します。


こちらはバランタイン20年(赤白旗のレアな奴)ですが、これもアメリカ向けの同時期の商品なので、スコッチですが同様の表記が入っていますね。同時期にアメリカで販売されたスコッチだというのがこのエンボスがあるだけで確定出来る訳ですね。


これに加えて、アメリカのオールドボトルの場合は広告をバンバン出している銘柄だと年数を追い易いです。この辺は広告業が盛んなアメリカらしいところですね。ウイルソンの場合は1930~40年代の広告に今回の白赤表記のボトルが出ているので、今回のものは恐らく第二次世界大戦前後の代物だと推察されます。

そんなウイルソンですが、少し酸味が出ている側面も合わせてもかなり美味しい一品でした。アメリカのオールドボトルは今まで色々と試してみましたが、どれも本当に甘くて濃く、現行品とは異なる香りや味にひきつけられてやまない魅力があります。機会があれば是非試して頂きたいですね:)


余談ですが、こういった古いバーボンやアメリカに輸入された古いスコッチなどの大量のストックが今でもアメリカ国内に眠っているといわれています。ネットの黎明期にはバーのマスターや一部のマニアな愛飲家の日本人がアメリカ市場のウイスキーをeBayなどで買えていたそうですが、同時多発テロ以降、アメリカにおけるハイプルーフのアルコールが規制で厳しくなってしまいオークションサイトでの個人売買が禁止になった為、今では個人での入手は困難な状況になってしまったそうです。とても残念ですね。

正規のオークションハウスに代理人を立てるという方法なら購入可能らしいのですが、ちょっと敷居が高いですよね。配送業者の手配なんかも全て自分でやり取りする必要があるそうです。

余談の余談ですが、天下のFour Rosesも昔はブレンデッドウイスキーのロゴでした。Four Rosesのブレンデッド、飲んでみたいと思いますが…見かける事は果たしてあるのでしょうかw

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